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若年層に強い高校留学の話

『広辞苑』の説明では、帰納はこんな説明になっています。
「推理および思考の手続の個々の具体的事実から一般的な命題ないし法則を導き出すこと。
特殊から普遍を導き出すこと」。
その反対語が演縁です。
演縁とは、前提された命題から経験にたよらず、論理の規則に従って必然的な結論を導き出す思考の手続-。
以上です。
「以上です」はいいけれど、理解できたのかな。
いっていることは、わかりますよ。
演縁と帰納では、ベクトルが逆ってことですよね。
特殊から一般を導き出すのが「帰納」、一般から特殊を導き出すのが「演縁」ということなのではありませんか?理解が早いね。
それでいい。
それで、どっちが小論文に使えるんですか?。
はあっ?やっぱり、本当にわかったわけじゃなかったか。
どういうこと?もちろん、どちらも使えるけれど、使いようによっては妥当性のない言説がいくらでも生み出せる。
「すべての人間は死ぬ運命にある」、「Fさんは人間である」、「ゆえにFさんは死ぬ運命にある」。
この論理の進め方は、演縁か帰納か、どっちわかるよ、それくらい。
演縁でしょ。
先生、ばかにしちゃいけないよ。
それは、きのう、わたしが説明した三段論法」そのものじゃないですか。
そもそも演縁について調べはじめたのは、三段論法」が演緯法の一種と書いてあったからですよ。
ごめん、ごめん。
そうだったね。
三段論法の場合は、大前提を操作すれば、いくらでももっともらしい嘘がっけてしまう。
いいたいことに結びつけられるように大前提をつくると、いくらでも悪用できる。
文章を読むときも、君が文章を書くときも、そこに留意する必要があるというのがきのうの話だったよね。
じゃあ、今度は「帰納法」にいこう。
「帰納法」の例を、自分でつくってごらん。
ちょっと待ってね。
ええっと……。
「わが友Gさんは、納豆が好きだ」、「わたしの母も納豆が好きだ」、「わたしの彼も納豆が大好きだ」、「兄貴も納豆が好物である」、「ゆえに、わたしが好きな人は、みな納豆好きだ」。
どう、できてる?あのねえ……。
そんなのしかできないのかな。
お父さんも納豆好きなんだよね?ううん、お父さんは納豆食べないの。
でも、わたし、お父さんはあまり好きじゃないから……。
へええ、父親はかわいそうだねえ。
まあいいが、今いったのはね、帰納法にかたよっているかもしれないが、結論が妥当とはいえないものの例だね。
この「わたしが好きな人は、みな納豆が好きだ」という結論は、否定例一つでびっくり返るじゃないか。
うん、さっきいってる最中に気がついたんだけど、わたしの親友Hは、納豆なんて食べたことないっていってたなあ……。
ここが、帰納法の弱点だからね。
よく注意して使うことだよ。
オーストラリア大陸のことがよく知られていなかった時代、白いスワンしか見たことのなかった人々は、「すべてのスワンは白い」と断定していたが、新大陸オーストラリアで黒いスワンを見て驚くことになる。
帰納法でいくときは、「黒いスワン」は本当にいないのかということを考えながら進むことが大切だね。
たとえば、君たちの書くもので多いのは……。
「わたしの中学校では、いじめがあった。
高校で友人に尋ねると、友人の中学校でもいじめ事件で大変だったという。
どうして日本の学校は、どこでもいじめが起きるのだろうか。
わたしには、アメリカ人の友人がいるが、彼女に聞くと、彼女の中学校でいじめが問題になったことはないという。
いじめは、日本特有の現象ということができる。
このままではいけない……」なんてね。
この手の論理展開をするひとは、残念ながら少なくない。
自分の見聞、体験からものを考えることは大切だけど、そこから一般的な法則のようなものを導き出していく場合は、細心の注意が必要だということだね。
少し、「論理的」の正体がわかったような気がする。
妥当性がなければ、一見「論理的」に見えても、あまり意味がないのですね。
三段論法、演縄法、帰納法、これくらい知っていれば、小論文を論理的に書くということの準備は、大丈夫なのかなあ。
実際には、自分はどんな方法で論理を運んでいるかということをあまり意識することはないんだけどね。
今、話題にしたようないろいろな方法を組み合わせて使っていることが多いよね。
もう一つ、小論文などで結論をいうときには、弁証法的に締めくくることが多いから、「弁証法」が頭にあった方がいいかな。
それ、何ですか?……つて、聞いても教えてくれないですよね。
調べてきまーす。
わかってきたじゃないか。
―(翌日)こんにちは。
このところ連続だけど、いいですか?もちろんいいよ。
待ってたよ。
弁証法について説明してみてよ。
それがですねえ、全然わからないんです。
また、論理学の本を見たんだけど、あんまりわけがわからないから、今までと同じように国語辞典に移ったの。
国語辞典は、短い言葉でわかりやすく説明してあると思って。
いろいろな国語辞典を調べてみたんですが、うまくいきませんでした。
なかには、二〇行も弁証法の歴史のようなことが書いてあるものもあって、結局、弁証法が何かはよくわからないままなんです。
先生、わたしにわかるように説明してくれませんか?悪いが、それはダメだ。
説明したくないんじゃないよ。
説明できないんだ。
正直にいえば、論理学的な意味での弁証法やその歴史は、よく知らない。
ええっ!絶句ですね。
わからないんですか。
じゃあ、調べろとかいっちゃだめじゃないですか。
ごめんな。
でも、論理学的な理解は目的じゃなかったでしょ。
弁証法的な考え方を、小論文にどう活用するかがテーマだったよね。
そのことなら話してあげられると思うよ。
ふうっ……。
安心しました。
混乱して終わりじゃ、救われませんもんね。
まず、ここを読んでよ。
「弁証法といえば、正、反、合という三幅対がつねに念頭におかれる。
つまり弁証法は、実在的な矛盾対立の関係の認識であり、その矛盾対立関係を克服していく運動(認識および実践)であると説かれるのが普通である」。
これが何いっているんだかわからないんですよね。
そうだろうね。
でも、ここが基本なんだ。
今、わかるようになるから心配しなくていいよ。
じゃあ、今度は、この文章を読んでよ。
最も単純な例から出発しよう。
いまAという人が「現実的世界」のなかで一つの対象に出会い、この花は白い」と言明し、同時に同一の状況においてBという人が、「この花は白くない」と言明したという事例を考えてみる。
この場合は話者が異なるから、AとBとの言明それぞれに関して異なる「論理空間」が開かれているわけであり、各「論理空間」のなかで矛盾律が犯されてはいないことになる。
しかし、AとBとの命題が同一の事態との対応をもつとされる限り、二つの「論理空間」は一つに統合される必要が生じてくる。
そして、そこに一つの「論理空間」が想定される限り、「この花は白いが、同時に白くない」という矛盾を含む命題が想定されることになる。
それゆえ、どちらの命題が事態と真に対応しているかが検証されねばならないことになるのである。
この検証は、「論理外の前提」に向けられる。
つまり、両者がどのように対象を切り取ったか、それを通じてどのように自己を限定しているかが問われるのである。
いま検証の結果、Aの言明は、Aの視点からこの花を見ていたため、光に照らされた花の部分について真なる命題であったし、Bの言明は、Bの視点からこの花を見ていたため、影になっている花の部分について真なる命題であったことが判明したとしよう。

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